
行政書士試験に「一般知識」という科目があるのはご存じですか?
この一般知識という科目、実は対策が難しく、更に一定の点数を取れないとその時点で試験不合格になる「足切り」も存在し、非常に厄介な科目なのです。
一般知識の対策や勉強法に悩む方は多いでしょうから、今回は「一般知識」に関する記事を書きました。
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僕は都内で行政書士事務所を経営する、開業4年目の現役行政書士です。
僕自身、2015年度の試験に独学で合格していますが、この一般知識には相当頭を抱えました。
今回この記事では、受験生当時の僕も知りたかった、一般知識という科目の概要や、それぞれの科目についての解説や勉強法、更には過去問もそれぞれ掲載していきます。
この記事を読めば、一般知識の全体像から科目ごとの詳細まで分かるようになります。
<以下の事項に当てはまれば、この記事はあなたにとって参考になります>
●行政書士試験の勉強をする全ての人
●行政書士試験に興味がある人
行政書士の通信講座に興味のある方は以下の記事もどうぞ。

Contents
行政書士試験【一般知識】の全体像

それでは、一般知識の全体像を解説していきます。
まず、行政書士試験は大きく分けて以下の科目から構成されます。
科目 | 問題数 | 配点 |
行政書士の業務に関し必要な法令等 | 46問 | 244点 |
行政書士の業務に関連する一般知識等 | 14問 | 56点 |
上の表のとおり、行政書士試験の中における一般知識の科目のウエイトは約18パーセントを占め、決して無視することはできない重要な科目ということが分かると思います。
一般知識のパートでは、以下の科目から問題が出題されます。
科目 | 出題数 |
政治・経済・社会 | 7問~8問 |
情報通信・個人情報保護 | 3問~4問 |
文章理解 | 3問 |
また、冒頭の述べた通り、一般知識には「足切り」という受験生泣かせの制度があります。
足切りとは
行政書士試験の合格要件の一つとして、以下の基準があります。
●行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40%以上ある者
上の基準の従うと、一般知識のパートでは14問中最低6問正解しないといけません。
それは、いくら法令科目が満点であったとしても、一般知識の正当数が6問を切っていれば、その時点で不合格になってしまうことを意味します。
しかし、いくら一般知識に足切りがあるとはいえ、一般知識の対策に多くの時間を割いて、法令科目がおろそかになってしまうのは本末転倒です。
上記の理由から、一般知識の科目にどの程度のウエイトを置くかの判断は難しく、それ故一般知識は受験生泣かせの科目となっています。
僕自身の話をすると、試験本番は(まぐれもあって)9問ほど正解できたのですが、その前に受けた模試では2回ほど一般知識の足切りに合いました。。
行政書士試験の一般知識【政治・経済・社会】

それでは、それぞれの科目についての詳細を書いていこうと思います。
まずは「政治・経済・社会」から。
概要
「政治・経済・社会」の科目では、一般知識科目の14問中、7~8問が毎年出題されます。
政治については、議員内閣制や大統領制などについての各国の政治制度や、日本の選挙制度、行政改革についてが出題されています。
経済では、財政問題や金融政策、国際経済についての出題が多いです。
また「社会」では、経済や政治以外の社会問題、例えば環境問題や社会保障制度を題材にした問題が出題されています。
過去問
それでは政治・経済・社会から、過去問をご紹介しましょう。
一発で当てられたらセンスがあるかもしれません。
<政治・経済・社会>
近年の日本の貿易および対外直接投資に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1.2010年代の日本の貿易において、輸出と輸入を合わせた貿易総額が最大である相手国は中国である。
2.日本の貿易収支は、東日本大震災の発生した2011年頃を境に黒字から赤字になり、その状況が続いている。
3.日本の対外直接投資を見ると、今後さらなる成長が期待されるアジアやアフリカ諸国への投資規模が大きいのに対し、北米や欧州への投資規模は小さい。
4.日本の製造業における国内法人および海外現地法人の設備投資額のうち、海外現地法人の設備等投資が占める割合は一貫して上昇している。
5.日本との間に国交が成立していない国・地域との貿易取引は、日本では全面的に禁止されている。
(2018年度本試験問50より)
※答えはこのページの一番下の「まとめ」で確認できます。
対策
政治・経済・社会は、出題範囲が膨大で、対策がなかなか難しい科目でもあります。
出来る限り対策としては、まずは高校の政治経済や現代社会の教科書でいいので、基礎知識をある程度確認する必要があります。
また、時事問題なども出題されることがあるので、基礎知識のみでなく、日々政治や経済のニュースをウォッチしておく必要もあるでしょう。
しかしその範囲の膨大さゆえ、費やそうと思えばいくらでも勉強時間を費やせることができるのがこの科目の難点です。
なので、ある程度割り切って勉強することが大事です。
この科目は、2~3問正解できればラッキーという心構えでいいと思います。
行政書士試験の一般知識【情報通信・個人情報保護】

それでは次に、「情報通信・個人情報保護」についての詳細を見ていきます。
概要
情報通信・個人情報保護の科目は、一般知識科目14問中、3問~4問が出題されています。
「情報通信」では、インターネット等の情報・通信技術に関する基本的な知識等が出題されています。
「個人情報保護」では、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、公文書管理法についての問題が出題されます。
過去問
それでは、情報通信・個人情報保護より過去問をご紹介します。
<情報通信・個人情報保護>
個人情報保護法において、個人情報取扱事業者が個人データを第三者に提供する際に、あらかじめ本人の同意を得る必要がある場合はどれか。
1.弁護士会からの照会に応じて個人データを提供する場合
2.交通事故によって意識不明の者の個人情報を病院に伝える場合
3.児童虐待を受けたと思われる児童に関する情報を福祉事務所等に連絡する場合
4.顧客の住所、氏名を自社の取引先に提供する場合
5.医療の安全性向上のために医療事故について国に情報提供する場合
(2013年本試験問56)
※答えはこのページの一番下の「まとめ」で確認できます。
対策
情報通信・個人情報保護の科目は、政治・経済・社会などに比べて出題範囲が限られており、対策が立てやすいです。
そしてこの科目に至っては、過去問演習が有効です。
「情報通信」の分野は、インターネットに関連する用語を抑えることが大事です。
基本の用語だけでなく、新聞やニュースをチェックし、最新の用語まで理解できるようになれればなお良いです。
また、「個人情報保護」については、法令科目のように重要条文をしっかりと抑えることが大切です。
個人情報保護は一般知識科目の中でも最も学習範囲が絞りやすく、対策がとりやすい科目になります。
近年、個人情報保護法は大きな改正もあったので、変更点も押さえておきましょう。
情報通信・個人情報保護の分野では、最低2問の正解を目指したいです。
行政書士の一般知識【文章理解】

それでは最後の科目、「文書理解」について詳細を見ていきます。
概要
文章理解は、一般知識科目14問中、例年3問が出題され、決まった出題形式で出題されています。
出題形式には以下の3つ形式があります。
①要旨把握型・・・文章からその趣旨にある選択支を選ばせる問題
②並べ替え型・・・バラバラにある文を正しい順番に並び変える問題
③空欄補充型・・・空欄に適切な語を入れていく問題
文章理解は例年3問出題されますが、近年は「並び替え型」と「空欄補充型」が中心の問題となっているようです。
過去問
それでは、文章理解の過去問をご紹介します。
<文章理解>
本文中の空欄Ⅰ~Ⅳに入る語句の組み合わせとして、妥当なものはどれか。
そもそもコミュニケーションは、自分の気持ちや意見、それに決意などを伝え、それを相手が受け入れて理解するところまでしないと、成立したとはいえない。もしそうでなかったら、そこには誤算や失敗しかなく、時間と努力を無駄に使った結果になる。
政治やビジネスの世界では、リーダーと称する人たちが大見えを切った発言をしている場を I に見る。大風呂敷を広げて広大な目標を掲げて「世界に向かって発信していく」と Ⅱ している。まさに「発信」だけあって、人々が受け入れて理解をし、賛同したり協力したりするところまでは気を配っていない。
すなわち、人々がきちんと「受信」してくれるところまでを説明したり説得したりする努力を続けてない。発信主義では相互理解の世界にはならない。口を開くときには、受信を重きに置いた「受信主義」に徹すしようとする心構えが必要不可欠だ。
もちろん、伝えようとする中身は重要である。それが間違っていたりピンぼけになっていたりしたら話にならない。だが、相手が正しく受け入れて理解できるような伝え方をしなかったら、 Ⅲ の目的は達成できない。相手の受信に重点をおいたコミュニケーションの仕方が大切である Ⅳ だ。
<出典:山崎武也「外国人は日本文化の「何」を知りたがっているのかーそのエッセンスは茶道の中にー」から>
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
1.間近 公言 初期 所謂
2.頻繁 豪語 所期 所以
3.往々 広言 庶幾 由来
4.目前 壮語 所記 由緒
5.身近 高言 書記 由縁
(2018年本試験問60)
※答えはこのページの一番下の「まとめ」で確認できます。
対策
文章理解は出題形式が固定されていることから、対策がしやすく、一般知識科目の中でも得点源にできる科目です。
そして、上でも紹介した文章理解の3つの形式(要旨把握型・並べ替え型・空欄補充型)にはそれぞれ一般的な解法があります。
まずはその一般的な解法を確認する為、文章理解(現代文)の問題集などで勉強するの得策です。
特に、文章理解は過去問を回して、問題に慣れていくのが効率的な勉強法だと思います。
問題の出題形式も固定されており、問題に触れれば触れるだけ解答する力がついていくはずですので、文章理解では是非3問全問正解を目指してください。
筆者の一般知識の勉強法は・・・

最後に、僕が受験生時代どのような勉強法をとったのか、参考までに少しご紹介します。
僕は、一般知識科目に関しては、過去問と一問一答をこなす以外、特にこれといった対策は行いませんでした。
理由の一つには、一般知識科目に個別の対策をしているほど、勉強時間に余裕がなかったから(法令科目で手一杯でした)。
また、「情報通信・個人情報保護」と「文章理解」については、過去問と一問一答集を行うだけで十分だろうと割り切っていました。
「政治・経済・社会」に関しても範囲が膨大で対策が難しいので、過去問と一問一答集を使って勉強するのみで、これといった対策は行っていません。
実際、僕が受験した2015年の問題では、出題意図がよく分からない、以下のような問題が出題されました。
日本の島に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1.日本の最東端の島は、沖ノ鳥島である。
2.日本の最西端の島は、与那国島である。
3.日本の最南端の島は南鳥島である。
4.日本の最北端の島は、利尻島である。
5.日本の最南端の有人島は、父島である。
こんなの、どうやって対策するんですか?(笑)
政治・経済・社会では、こんな問題も出てくる可能性もありますので、対策に多くの時間をかけるのは本当に無駄だと思います。
ちなみに僕はまぐれで正解を出せました(正解は2です)。
一般知識科目を無視するのは得策ではありませんが、ご覧の通り運の要素も大きいので、ある程度割り切って勉強するのがいいでしょう。
一般知識の対策としては、問題集を回していくのが効果的です。
LEC出版の問題集は最近10年分の問題から構成されており、解説も充実しているので、一般知識の対策として良い書籍だと思います。
また、以下のWセミナーの問題集は、過去問のみでなく予想問題も収録されているので、こちらも要チェックです。
まとめ
今回この記事では、行政書士の一般知識科目について詳細を解説してきましたが、少しは参考になったでしょうか?
最後に、上で紹介したそれぞれの科目の過去問の解答を以下掲載しました。
<過去問の解答>
●「政治・経済・社会」
正答:1
●「情報通信・個人情報保護」
正答:4
●「文章理解」
正答:2
あなたいくつ正解を出せましたか?
確かに一般知識科目は総じて対策が難しいですが、確実に得点が目指せる文章理解や情報通信・個人情報保護の科目にウエイトを置いて勉強していけば、必ず結果はついてくると思います。
頑張ってください。