「法律系資格の登竜門」と言われている行政書士試験。試験に合格すれば独立開業の道も開ける、とても可能性にあふれた資格です。
よって、誰でも簡単に合格できる試験ではありませんが、正しい方法で勉強をすれば、決して手が届かない試験ではありません。
そんな行政書士試験ですが、そもそもどのような試験なのでしょうか?
今回はそんな行政書士試験の概要、合格率、難易度、はたまた僕が実際に勉強して独学で1発で受かったおすすめの勉強法など、行政書士試験の全体像が理解できる完全ガイドを作りました。
行政書士試験を受験する予定がある方はもちろん、少しでも興味のある方の参考になれば嬉しいです。
Contents
行政書士試験の概要
以下、行政書士試験の概要を表にまとめました。
受験資格 | 年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できます。要は、合格基準を満たしていれば誰でも資格を手にすることができます。 |
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試験日 | 11月の第2日曜日(令和元年度は11月10日(日)でした)
試験開始時間は午後1時~午後4時の3時間です(長丁場です) |
試験場所 | 各都道府県 |
受験費用 | 7,000円 |
受験申込受付 | 郵送での受験申し込み、インターネットでの受験申込により日程は多少異なりますが、例年7月下旬~8月下旬までです。詳しくは行政書士試験試験研究センターをご覧ください。 |
試験科目と試験の方法、配点と合格基準について
試験方法
試験は、筆記試験によって行われます。出題の形式は、択一式と記述式の2パターンになります。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」は択一式と記述式で出題されます。
「行政書士の業務に関連する一般知識等」は択一式として出題されます。
記述式は、40字程度で記述するものが3問出題されます。
択一式とは:五肢の中から答え一択を選ぶマークシート式の試験です。多肢の中から答えを選ぶ多肢選問題もあります。
試験科目
行政書士の業務に関し必要な法令等(出題数46題) | 基礎法学 |
憲法 | |
民法 | |
行政法<行政法の一般的な法理論> | |
行政法<行政手続法> | |
行政法<行政不服審査法> | |
行政法<行政訴訟法> | |
行政法<国家賠償法> | |
行政法<地方自治法> | |
商法 |
行政書士の業務に関連する一般知識等(出題数14題) | 政治・経済・社会 |
情報通信・個人情報保護 | |
文章理解 |
配点
試験科目 | 出題形式 | 出題数 | 配点 |
行政書士の業務に関し必要な法令等 | 5肢択一式 | 40問 | 160点 |
多肢選択式 | 3問 | 24点 | |
記述式 | 3問 | 60点 | |
計 | 46問 | 244点 | |
一般知識等 | 5肢択一式 | 14問 | 56点 |
合計 | 60問 | 300点 |
合格基準
1.行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50%以上である者。
法令等の科目に関しては、民法と行政法が試験の300点満中6割を占めています。よって民法と行政法をいかに攻略するかが行政書士試験の合否を決めるキーになってきます。
2.行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40%以上である者。
一般紙知識に関する問題は足切りがあり、14問中最低6問正解しないと、いくら法令で点数が良くても不合格になってしまいます。出題の範囲も広く、対策が難しい科目でもあります。
3.試験全体の得点が、満点の60%以上である者。
法令と一般知識で最低基準以上を取ったとしても、試験全体の得点が300点満点中180点を超えない限りは合格には至りません。
合格基準については、問題の難易度を評価され、補正的措置が加えられることがあります。
また、以前には没問が出る年もあり、その場合は全員の解答を正解として採点されます。僕が受験した平成27年度の試験も1問没問が出て、4点加点されました。
行政書士試験の合格率と難易度
それではまず過去10年の行政書士試験の合格率の推移を見てみましょう。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成21年度 | 67,348 | 6,095 | 9.05% |
平成22年度 | 70,586 | 4,662 | 6.60% |
平成23年度 | 66,297 | 5,337 | 8.05 % |
平成24年度 | 59,948 | 5,508 | 9.19 % |
平成25年度 | 55,436 | 5,597 | 10.10 % |
平成26年度 | 48,869 | 4,043 | 8.27 % |
平成27年度 | 44,366 | 5,820 | 13.12 % |
平成28年度 | 41,053 | 4,084 | 9.95 % |
平成29年度 | 40,449 | 6,360 | 15.7 % |
平成30年度 | 39,105 | 4,968 | 12.7 % |
このように合格率の推移をみていきますと、平成21年度~25年度の5年間の平均合格率は約8.6%となりますが、平成26年度~30年度の直近5年の平均合格率は約11.95%と上昇傾向にあります。
ちなみに僕が受験して合格した年は平成27年度になりますので、合格率は13.12%と2番目に合格率が高い年でした。
ただし、いくら合格率が上昇しているとはいえ、法律系資格の登竜門ともいえる国家資格ですので決して簡単ではなく、難易度はかなり高いです。
法律初学者にとっては言うまでもなく相当難易度が高い試験ですし、法律を勉強されている方でも、試験対策を無しでの合格は限りなく難しいといえます。
また、この表を見て個人的に気になる点としましては、受験者数は平成22年度から右肩下がりに落ちているという点です。
行政書士の人気がなくなってきているのでしょうか。
確かに、行政書士はAIに仕事を取られるであろう職業の上位にランクインしているので、その影響は少なからずあるのかなと思います。
まぁでもすでに開業している僕からすると、新規参入数が減っているという事にもなりますので、ちょっと良いような気がしなくもないですが・・・。
行政書士試験の難易度~他資格との比較~

ここでは、他資格の合格率などと比べて、行政書士試験の難易度を見ていきましょう。
宅建との比較
宅建の資格は行政書士の資格と比べられることが多く、一般的には行政書士試験は宅建より難しいといわれます。それでは、以下に過去5年分の宅建の合格率の推移を見ていきます。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成26年 | 192,029 | 33,670 | 17.53% |
平成27年 | 194,926 | 30,028 | 15.40% |
平成28年 | 198,463 | 30,589 | 15.41% |
平成29年 | 209,354 | 32,644 | 15.59% |
平成30年 | 213,993 | 33,360 | 15.59% |
合格率を見ていくと、どの年も15%以上あり、数字の上でも行政書士試験の方が難易度が高いといえそうです。
また、宅建は行政書士試験と違い記述式の試験がありませんので、行政書士試験よりは楽に対策ができるのではと思います。
ただし、宅建では不動産業に従事している等のある一定の基準を満たした者については、5点免除される等、行政書士試験とは異なった条件もありますので、その点は2つの試験を比較する上で注意しましょう。
司法書士試験との比較
司法書士と行政書士はパッと見た感じ似ているので、詳しくない方からすると同じように見えるようですが、実は試験内容も難易度も全く異なります。
以下、司法書士試験の合格率を見ていきましょう。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成26年度 | 20,130 | 759 | 3.77% |
平成27年度 | 17,920 | 707 | 3.95% |
平成28年度 | 16,725 | 660 | 3.95% |
平成29年度 | 15,440 | 629 | 4.07% |
平成30年度 | 14,387 | 621 | 4.32% |
見てください。合格率、めちゃくちゃ低いです。
しかも、司法書士試験は、既定の合格点を満たす人が全員合格となる「絶対評価」ではなく、成績上位だった受験者の一部を合格とする「相対評価」です。
例えば、絶対評価である行政書士試験は、合格点である180点を取れば全員合格となりますが、司法書士試験では、基準点を超えた人の中から、相対評価で合格点が算出されて合格者が決まります。
さらに巷では、司法書士試験合格に必要な勉強時間は3000時間以上とも言われています。
その点で考えても行政書士試験と比較にならないほど司法書士試験は難しいです。
僕はもう3000時間も試験勉強したくありません・・・。
結果、行政書士試験は司法書士試験に比べると難易度が低いといえるでしょう。
行政書士試験の勉強法
行政書士試験の勉強法について、独学か、またはお金を払って通信講座を受けるかの選択肢があります。
僕はちなみに独学で勉強し、運よく一発で合格することができました。僕の勉強法はとにかく過去問中心で、過去問集がボロボロになるまでぶん回すスタイルで合格までこぎつけました。
当時の僕の勉強法の全てをつぎ込んだ記事を以下に貼っておきますので、独学で合格する為の勉強法を探しているという方は是非参考にしてみてください。きっとなにかお役に立てるはずです。

また、効率よく短期間で合格したいという方には通信講座を受講するという選択肢もあります。忙しい社会人の方や、いち早く試験に合格したいという方はご検討されてみてもいいかと思います。

合格までの必要勉強時間
巷では、行政書士試験の合格に必要な勉強時間は500時間~600時間といわれていますが、果たしてどうなのでしょうか。
もちろん受験をする方が初心者か、法律の勉強経験者かでも変わってきますが、僕自身行政書士試験に自信をもって合格するまでにはおよそ1400時間程の勉強時間を費やしました。
それが長いか短いかはさておき、それから分かったことは、行政書士試験は空き時間にちょっと勉強したくらいでは受かることができないという事でした。
行政書士試験に合格するまでの勉強時間に関しては、以下の記事に詳しく書いています。試験合格までの勉強時間のイメージをつかみたいという方は、是非参考にしてみてくださいさい。

試験に合格した後は・・・
努力が実を結んで試験に合格をした後は、行政書士の資格を生かして独立開業を目指すこともできます。
また、そこまでリスクを取れないという方は行政書士事務所に使用人行政書士として就職するという選択肢もあります。
僕は試験に合格した後思い切って開業しましたが、その思い切った行動によって自分の人生がより明るい方向に切り開けたと思っています。
行政書士試験合格後、もしも独立開業を志しているのであれば、以下の記事をご覧ください。開業する上で何かヒントになるかもしれません。

また、行政書士事務所に就職しようか、それとも開業しようか迷っている方は以下をご覧ください。使用人行政書士になるメリット・デメリットを解説しています。
